随筆かも知れない

「じねん」と読むらしいです

「自然」といえば山や川があり、空気のおいしい緑あふれる環境を想像するのは私ばかりではないでしょう。最近では都会に暮らしていて普段そういった環境に接する機会のない人たちだけでなく、すぐ近くに豊かな「自然」のある人たちまでもが、「自然」の中でたわむれるために多くの時間や金銭を費やしたりします。しかもそれは単なる「ファッション」ではないようです。今日の私達が精神的に「自然」から遠いところにいるということの現れであるといえるでしょう。経済発展と環境破壊の問題、こういう言い回しの場合には「環境」とはおもに「自然環境」だったのですが、実は「人間環境」とでもいうべきものがおのずからそこに含まれていたわけで、その議論の結論が得られないままに経済を優先させ、その経済が行き詰まった今、なくしてしまったものに対する郷愁はさらに絶ちがたいということなのでしょう。たとえ芸術性の高いものであるとしても、人為的に作られた造形物はついには私達を息苦しくさせてしまいます。私達は結局一輪挿しに花を飾ります。

これは余談ですが、滋賀県のある町に空港建設が立案され、何年もたった今もまだ議論が交わされています。その中で、建設反対の立場の人たちが口にする自然環境の破壊という反有益性に対する建設賛成の人たちの反論は、実に興味あるものでした。自然保護というのは何もしないでそのままにしておくということではなく、文字通り人間が手を加えて自然を保護する事で、自然は人間が手を加えて保護しない限り現在の状態を維持できないというのがその反論の大筋です。(例えば人の入らなくなった山はほんの数年で山といえるような山ではなくなるのだから、人間が手を加えて保護しなくてはならないのであり、そのためには人件費が必要だが予算がない。空港建設とそれに伴う町の活性化は大きな収入源となるのだから、自然保護を主張するのであれば空港建設を進めるべきであると論じられていました。この種の議論のほとんどが不毛に終わるという見本を見るようです。)

私達もまた「自然」の一員であることは、どれほどの「人間様」になっても決して忘れてはならないことです。同時に、私達がすでに「自然」を逸脱してしまっていることも、「自然」に比べれば「たかが人間」にすぎない私達にとって、今一度大いに自覚されるべき大事です。「自然」の一員である私達がそこを離れて作り出した「人間環境」の破壊が、表だって進む「自然環境」の破壊と並行して、しかもそれほどには目立たないままに進んでしまっています。どちらも非常によろしくない例であると承知しながら、これ以上に身にしみるものはないと思いますのであえて言いますが、私達人間は、地震を起こして多くの人を死なせることはできないが時として両手を使って子供の首を絞めて殺してしまうのです。

私達は現在の「人間環境」の破壊された状態を見据えなければならないでしょう。その惨状から目を逸らさず、回復すべきものを回復する事を他ならない自分の任務としなければならないでしょう。これは気休めに花一輪飾って済ませられる問題ではないのです。


ちなみに、前回の「お寺の掲示板」に書いてある「自然」は「じねん」と読むのが正しいんだそうです。『「じねん」に生きられんのが人間やから、「しぜん」の世界では考えられんことを人間はしでかしてしまうのや』とのご院主さんのお言葉でした。

最新の掲載へ  101回からの掲載へ

以前の掲載一覧
100 自燈明
99 (無題)
98 (無題)
97 不信にあらずや
96 大地
95 教訓
94 名宛人不明
93 具体
92 益・無益
91 大自覚
90 出来た人
89 お講の風景
88 いわずもがな
87 放言-3
86 放言-2
85 放言
84 宿業
83 不可思議
82 不思議
81 自我と我執
80 慚愧
79 報謝
78 感想文
77 余計なお世話
76 ある確認-3
75 ある確認-2
74 ある確認-1
73 (無題)
72 今にある歴史
71 とわれるもの(2)
70 問われるもの
69 証道の歴史
68 そのうえの念仏
67 中中おろかなり
66 大悲無蓋
65 無生の生、往生
64 「おめでとう」
63 称名
62 救い
61 いのちである言葉
60 信楽受持甚以難
59 家族の真宗
58 詮ずるに愚痴
57 無碍光如来
56 光明無量
55 非行非善
54 仏法聞き難し
53 (無題)
52 さるべき縁
51 いそぎ仏になりて
50 遺伝
49 無生
48 構造
47 迷い
46 (転載)
45 奇妙な反省文
44 現在
43 念仏、お念仏
42 (無題)
41 お聞かせ
40 謝すべし
39 相続
38 自縄
37 我が身
36 立所
35 心の向かうところ
34 不可説
33 個性
32 癒し
31 (無題)
30 ただ称える
29 輝く
28 有量
27 光と闇
26 深い闇
25 ただ一つ
24 離れる
23 意味の奥底
22 梅の花が
21 念ずる方向
20 穴の中
19 罰があたった
18 掌を合わす
17 悪人たる所以
16 極点に立つべし
15 大海
14 奇妙な酔っぱらい
13 ばあちゃんの避難訓練
12 無智
11 芸術の秋
10 仮想現実
日本教
ベクトルでもない
転んだら立ち上がれば...
京都の五山の送り火は
今回は関西弁で


「じねん」と読むらしいです
HEAVYってどういうこと?

かも知れない検索
(別窓で開きます)