随筆かも知れない

転んだら立ち上がればいい

8月20日

今回掲載した「お寺の掲示板」の言葉を見たとき、思い出したことがありました。

わたしの住んでいるところでは数え年で25歳から45歳までの男は年末に「夜警」をしなくてはなりません。夜の9時から翌日の4時頃まで、会議所に詰めて1時間ごとに町内を巡回するのです。それほど堅苦しいものではありませんので、合間にはお酒の飲める人は飲みますし、寝てしまう人もいます。お酒を飲み過ぎて大声でしゃべりながら巡回して顰蹙をかうことの方が多いくらいなのですが、昨年は夜警を始める1時間ほど前に近所で不審火があり、いつになく真面目に巡回をしました。

田圃の畦道を通って回ったことがないようなところまで回ったのですが、何度も回っているうちに持っている懐中電灯の光が頼りなくなってきました。ほんの5メートルほど先がぼんやりとしか照らし出されないような光です。ある程度の幅のある舗装された道はそれほど困りもしなかったのですが、畦道には石が置かれていたり排水のための溝があったりします。細いうえに凹凸があります。まわりは田圃で建物は何もありませんので、どんなふうに曲がっているのか見当のつけようもありませんので、歩くのに非常に困りました。

蹴躓いたりして転ばないように足下を照らしていると道が見えませんのでとんでもない方に行ってしまいますし、おぼろげながらも数メートル先が見えるように照らして道筋を見ていると、足下が見えませんので凹みに足を取られたりします。先を照らしたり足下を照らしたり、時には立ち止まったりしながらのわたしを気にもかけず、酔っぱらっていても明るいライトを持った人たちは難なく歩いていきます。なるほど十分に明るい光というものはありがたいものだとわたしは感心したのです。

我々は各々が自分の光を持っているのでしょう。そしてそれは十分に明るいのでしょう。少なくとも自分ではそう信じている筈なのです。信じていればこそ我々は立ち止まってばかりいないで歩いていくのです。しかし、我々の光がいつもいつも足下と行く先を明々と照らしているとは限らないということは覚えておかなければならないのではないでしょうか。先ばかりを照らして足下が暗いこともあればその逆もあるでしょうし、両方が暗いことも時としてあるでしょう。そして各々が道を歩いてゆく、それは人それぞれの道で全く独自の新しい道かも知れないけれど、それとは別に我々すべてが歩む共通の道がある。それはすでにある道です。我々すべてが歩いて行くべきすでにあるその道は、躓いて転んでも立ち上がればいいが、決してはずれてはいけない道です。それぞれの道を歩み始めてしまっている我々ですが、このことだけは忘れてはいけません。

その道を踏み外してしまった人のこの頃何と多いことでしょう、「人でなし」といわれるのは犬や猫ではなく人にほかなりません。


「仏」とは人格の完全な円満者であるという説明もあるらしいです。「お寺の掲示板」がどういう意味なのかはよく分かりません。お坊さんが書くことですから仏教的な意味があって、仏教的な解釈があるに違いありません。ですが、一般的な意味で一般的な解釈もできるように思います。

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ベクトルでもない
転んだら立ち上がれば...
京都の五山の送り火は
今回は関西弁で


「じねん」と読むらしいです
HEAVYってどういうこと?

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