随筆かも知れない

ベクトルでもない!

9月4日

ちょっと考えてしまいました。今回の「お寺の掲示板」には書かなかったんですが、本当のお寺の掲示板には小さい字で続きが書いてあったんです。「生半可な学問が私達の目を暗くして見えるものを見えなくしている」という言葉が。

確かに道はいくつもあります。けれど、どこへ行くか目的地が決まらなければどの道を行くかは決められません。最近はカーナビゲーターという便利なものが普及したようで、車に乗っていると機械が目的地まで道筋を案内してくれるのですから道を間違えるということはないのですが、行き先を決めなければいかに便利な機械でも案内のしようがありません。現在地と目的地の二つが決められてはじめて少なくとも一つの道が決まるのです。ところが私達はだいたいの想像をつけてしまいます。この道を行けばだいたいあのあたりへ行き着くだろうという想像をつけるのが「生半可な学問」であり、いろいろと想像してついには本当に行き着くべきところがどこなのかを見失っているのが今日の私達の姿であるように思えます。

また、たとえば富士山の山頂へ行く、そこが目的地だと決まっているとしましょう。麓までは便利な機械が案内してくれますし、そんな便利なものがなくても地図を見ながらでもいけますが、あとは自分で登らなければならない。私は登山なんていう疲れることはしないのでよく知らないんですが、富士山の頂上に到達する道はいくつもあるんでしょう。でも、登りはじめたら道は一つです。同時進行的にいくつもの道を通るということはできませんから、この道でいいのだろうかという不安もうまれるはずです。いくつも道があるということを知っているのが「生半可な学問」ということなのであり、どの道を行こうか、どの道が一番いいのだろうかと迷ってばかりいて、ちょっと登りはじめては不安になってまた引き返したりして、結局登れないでいるのが私達なのでしょう。これは確固たる自己を持っていないということであり、いわば自分の現在地が分かっていないということです。

私達は目的地を見失っているだけでなく、現在地も分からなくなっているためにとうてい自分では歩みを進められない。こんなふうに最初は考えましたが、どうやら違うようです。これは2点が決まれば直線が一本決まるという中学で習う数学、一次関数では座標平面上で2点の座標が分かればその2点を通る直線の式が分かるということに当てはまるのでしょう。

次に考えたことは、いわば高校で習うベクトルでした。方向と長さを持つ直線を「道」と考えたのです。これは起点が決まればいいわけです。終点は自ずから決まります。この場合、「起点」が現在地ということになるのでしょう。

私達は自分で自分を見ることができない。鏡というものがあるが、鏡を見ている自分の背中は鏡では見えない。そもそも鏡には写らないものがある。そういうことに気づかずに鏡に写った自分が自分であると信じ込んでいる。私達が愚かである所以はここにある。そして、「聞く」ことによって自分では知ることができない自分を分からせていただく、それが出発となる。以前に紹介した「お寺の掲示板」に書かれているのはそういうことかも知れません。出発があるところにすでに道が開けている。そして、自分というものの正体を聞き続ける限り道が絶えるということはない。私達は歩み続けられるわけです。

ベクトル的な考えを大まかに書いてみるとこんなふうなことになりますが、どうもこれも違うようです。

こんなことをいろいろと考えていて、これは違う、これも違うといっている自分にふと気がついたわけです。これこそが生半可な学問(私にもそんなようなものがあるとして)のために見えるものが見えなくなっているということではないかと。

道は確かにあるわけです。私が信じるのでなく、私に信じさせてくれる道を行けばいいのではないでしょうか。


「心得たと思うは、心得ぬなり。心得ぬと思うは、こころえたるなり。」という言葉があるそうです。実に含蓄の深い言葉です。

最新の掲載へ  101回からの掲載へ

以前の掲載一覧
100 自燈明
99 (無題)
98 (無題)
97 不信にあらずや
96 大地
95 教訓
94 名宛人不明
93 具体
92 益・無益
91 大自覚
90 出来た人
89 お講の風景
88 いわずもがな
87 放言-3
86 放言-2
85 放言
84 宿業
83 不可思議
82 不思議
81 自我と我執
80 慚愧
79 報謝
78 感想文
77 余計なお世話
76 ある確認-3
75 ある確認-2
74 ある確認-1
73 (無題)
72 今にある歴史
71 とわれるもの(2)
70 問われるもの
69 証道の歴史
68 そのうえの念仏
67 中中おろかなり
66 大悲無蓋
65 無生の生、往生
64 「おめでとう」
63 称名
62 救い
61 いのちである言葉
60 信楽受持甚以難
59 家族の真宗
58 詮ずるに愚痴
57 無碍光如来
56 光明無量
55 非行非善
54 仏法聞き難し
53 (無題)
52 さるべき縁
51 いそぎ仏になりて
50 遺伝
49 無生
48 構造
47 迷い
46 (転載)
45 奇妙な反省文
44 現在
43 念仏、お念仏
42 (無題)
41 お聞かせ
40 謝すべし
39 相続
38 自縄
37 我が身
36 立所
35 心の向かうところ
34 不可説
33 個性
32 癒し
31 (無題)
30 ただ称える
29 輝く
28 有量
27 光と闇
26 深い闇
25 ただ一つ
24 離れる
23 意味の奥底
22 梅の花が
21 念ずる方向
20 穴の中
19 罰があたった
18 掌を合わす
17 悪人たる所以
16 極点に立つべし
15 大海
14 奇妙な酔っぱらい
13 ばあちゃんの避難訓練
12 無智
11 芸術の秋
10 仮想現実
日本教
ベクトルでもない
転んだら立ち上がれば...
京都の五山の送り火は
今回は関西弁で


「じねん」と読むらしいです
HEAVYってどういうこと?

かも知れない検索
(別窓で開きます)