随筆かも知れない

転載の天才?

10月22日

海よりも大きな船などというと、そんなものあるわけがないと思う人がいるかも知れない。あるいは想像上の話だと思う人がいるかも知れない。しかし、嘘を言っているのでもなければ想像でものを言っているのでもない。

ある死刑囚は「無知が私に殺人という罪を犯させた」というようなことを書いていたが、これは殺人が重罪であることを知らなかったということではなく、最終的に殺人という罪を犯させるような状況を作り出す素地が「無知」であったということである。宗教的な意味を離れても「無知」ということは、それ自体は罪ではないにしても罪を生むものなのであろう。

無知の最たるものは自身の「無知」を知らないことに他ならない。これこそが「無智」(お内仏にある「お文」の一番最初をご覧なさい)であるという言い方もできる。私達は無智である。今までも無智であったし、今も全く無智である。それは例えば私達が目の前に波が迫ってきた時に慌てて船をさがすことからも分かる。それだけではない。いくらさがしても船が見つからないものだから自分で船を造ってしまう。いったいいつになれば慌てて探し当てる船が、実は、船だと自分が思いこんでいるだけのものだということに気づくのか。いったいどうすれば自分の造る船が、実際には自分が想像する以上の波が来る海ではすぐに木っ端みじんになるものだということに思い当たるのか。

バケツ一杯ほどの水でも人間は溺死することがある。バケツの中の水の表面にたつ波ばかりみているとバケツが大海のように思えてくる。そのバケツを両腕で抱え込んで、中に頭をつっこんで息ができずにもがき苦しんで溺れているのが、慌てて乗る船をさがし、自分の船を造っている私達の姿そのものである。むしろ滑稽なほどに、悲しい限りの姿だ。バケツを離れなさい、私を溺れさせているその水は、私を生かしてくれる水だと教えていてくださる方がおられる。その方に感謝申す他に何があろうか。その方が一生涯をかけてご恩を尽くされた六字のお姿に掌を合わさずに生きていけようか。それができないのは、まだ頭がバケツの水の中にある証拠で、何ともいいようのない悪人だ。


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