随筆かも知れない

ばあちゃんの避難訓練

11月1日


毎日新聞10月26日朝刊の「万能川柳」に

ばあちゃんの避難訓練拝むだけ

というのが掲載されていました。


前々回このページを更新した頃から毎日新聞の『みんなの広場』が宗教・信仰ということで少し賑やかになりました。発端はある僧職の方が「日本仏教は本来の姿に戻らなければならない」というようなことを投書されたことで、「その通りだ、信仰はお金に左右されるものではないはずだ」と別の方からの投書が続いたのです。「葬儀も戒名・墓石もいらない」と他の方がおっしゃり、「お金を超越した本物の宗教の出現を望む」(下線hide-me)とまた別の方がおっしゃいました。おそらくこのあたりで一応のピリオドが打たれるのでしょう。

実は発端となる投書の前から同新聞に「寺おこし 心おこし」という連載が始まっており、さらにその前から「蓮如を歩く」という連載も始まっています。この「蓮如を歩く」というのは、蓮如上人500回御遠忌に合わせて浄土真宗本願寺派と真宗大谷派が合同で京都国立博物館で開催する「蓮如と本願寺」という特別展覧会に毎日新聞社が「共催者」として加わっているということもあってはじめられたと思われる連載です。私などは国内最多の信者を持つこの両派に好感を持たない人達がその新聞社にいて、何か意図するところがあって「寺おこし 心おこし」という連載を始めたのではないかなどと、深読みのしすぎかあるいは好事家の浅知恵か、自分ながらお恥ずかしいようなことを思っていたのです。その両派が「戒名」というものを用いないことを知らない人が、戒名をお金で売り、葬式仏教・観光仏教を仏教にしてしまった元凶がこの両派だと思いこんでいて、「跡継ぎ不要で宗派は問わず永代供養する集合の墓『安穏廟』を建てた」日蓮宗の僧侶の方の方向性こそが宗教の今日的課題に応えるものと考えて連載を依頼したのではないかと、そう考えていたわけです。

二つの連載が並行しているなかで、一般の方の投書が掲載され、その内容を読んでいて私が気づいたのは、私が考えていたようなこととは無関係なところに人々はいるのだということです。私のお恥ずかしい限りの憶測が当たっていたとしたら、『安穏廟』に現代仏教の一つの方向を見た新聞社の人たちが一番驚いたに違いないでしょう。

発端となる投書をされた僧侶の方は「本来の姿に戻れ」と言われました。『安穏廟』を建てた僧侶の方は、いわば一種の対症療法を実行しておられるわけですが、決して新しい宗教を出現させたわけではありません。お金を超越した本物の宗教の出現を願っている人はそれを願っている限りいつまでたっても「邂逅」を知らないままでしょう。

ばあちゃんの避難訓練拝むだけ

この川柳の作者はおそらく意図していないのでしょうし、拝むだけのばあちゃんもあるいは本当に避難訓練をしていたのかも知れません。けれど、どんな宗教のどんな教義も何も知らないでも、人がただ拝むだけのところにこそ実は本物の信仰があり、ただ拝むだけの人がいるところに本物の宗教がすでにあるのではないでしょうか。


昔、学習塾のお手伝いをしていた頃のことを思い出します。その塾に来ている中学三年生だけを集めた夏休みの一ヶ月間のいわゆる「受験勉強」は何故か私の担当と決まっていました。歴史の分野では鎌倉時代の新仏教は重要ですので、それぞれの開祖の名前を書いてもらっていたのですが、数年間のうちの百数十人のなかでただ一人『浄土真宗』=「親鸞さん」と書いた生徒がいました。その生徒の家は私のところからも比較的近いところで、その村には私もたびたびお話を聞かせてもらっているご院主さんのお寺があり、日曜学校をしておられます。さてはと思って意地悪くその子に聞いてみたのです。
 「なんで真宗だけ親鸞と違て親鸞さんやの?」
 「何かしらんけど小さいときからそう言うてるさかい」
この子は、といっても今ではもう立派な大人なのでしょうが、本物の宗教の出現を望むということはないのでしょう。?

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