随筆かも知れない

穴の中

1月29日

穴の中にいて穴を掘る、そういうことを実際にされることがあるかどうかは別として、考えてみて下さい。スコップのとどく範囲を一生懸命に掘ります。穴はどんどん深くなっていきます。スコップで掘った土を放り出すのですが、それが他人さまにかかって迷惑をかけていても、気づかないでいます。気づいても、構っていられません。口では謝ったりもしますが、穴は掘り続けます。

ただただ掘り進みます。どのくらいまで掘り進むと気がつくでしょうか、そのまま掘り続けると自分の力では出られなくなるということに。自分一人では出られなくなることに気づくのが遅いと、自分の掘った穴は相当に深く、もはや背伸びをして手を伸ばしてもつかみ所はない、まわりは高くそびえる土の壁ということになります。

私達が「願う」ときというのは、ほとんどが「穴の中にいて穴を掘る」のと同じではないでしょうか。私達が「願う」のは、例えば「ここに大金が埋まっているに違いない、それが欲しい」というのと同列のことであるのがほとんどではないでしょうか。実際に大金が埋まっているのであれば掘るのもいいでしょう。しかし、穴から出られないかぎり「大金」は使いようがありません。使いようのないお金を欲しがっていたのではないはずです。自分の力で出られない穴の中にあって必要となるのは「使いようのない大金」ではないはずです。

私達はこれから穴の中に穴を掘るのではありません。もう自分の力では出られないほどに深い穴の中にいます。その穴の中で見つけたものが大金であるか、あるいはこじんまりとした幸せであるかは人それぞれでしょう。しかし、ふと気がつけば自分がいるのが深い穴の中であるということはいずれの人も同じです。

さて、すでにその穴の中にいる私達に、例えば土壁をスコップで掘り、階段状のものを作ってその穴から這い上がることは可能なのでしょうか、また、必要なのでしょうか。

自分がスコップで削った土の壁が自分の「業」だと見えるとき、気づくことがあります。何とも自分は愚かしいものだと気づくとき、「業」であるまわりの土の壁は、同時にお念仏であります。スコップで一掻き一掻きした「業」という跡の残るその土壁に囲まれた穴がそのままに私の生きる場所となり、往生の場所となるのであります。そこは生死輪転の家ではありません。


私達は想像の世界でも自己の現実から逃れることは出来ないようです。実はこんな比喩的な「お話」を考えたのは重力が地球の1/6であったり無重力であったりする「場所」を経験した人の話を聞いているときでした。「お浄土」というのは無重力の世界かも知れないと想像するのは突拍子もないことなのでしょうが、私達が「お浄土」を想像するときに無意識に重力を仮定するのも実は突拍子もないことなのではないでしょうか。お念仏の智慧、お働きとは私達の心にかかる地球の重力を無重力にする力ではないかと、私はこの時考えてみていたのです。

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「じねん」と読むらしいです
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