随筆かも知れない

念ずる方向

2月7日

親しかった方のお通夜にお参りしました。68歳での命終は今日の平均寿命などを思うと、残念で仕方ないことでした。

皆さんは今夜こちらにお参りされて南無阿弥陀仏とおっしゃいませんでしたか、おっしゃったとすればどういう意味でおっしゃったのですか、とお坊さんがお話のなかで尋ねられました。ここからはそのお話の大体の続きです。

なくなられた方に「どうぞ迷わず成仏して下さい」という意味で南無阿弥陀仏と言うのであれば、それはお念仏ではありません。例えば今ここにおられるのは五十人くらいでしょうか、五十人の人間が「どうぞ迷わずに成仏して下さい」と念じてこの方が成仏なさるのでしょうか。私たちが念じて成仏されるのであれば五十人より百人の方がよい、百人より千人の方がよいということになります。私たちが願って叶うのであれば願えばいいのでしょうが、私たちにそのような力があるのでしょうか。どうもそんなお顔をなさっている方はおられないと私は思います。

私がここで南無阿弥陀仏とお念仏する、それはこの方がお念仏をいただかれて成仏された、その仏であるこの方から私たちが願われているということでしょう。この方がどうぞあなたも迷わずに成仏して下さいよと私の口からお念仏をださせて下さっているのでしょう。南無阿弥陀仏というお念仏は分解できるものではないと思いますが、言葉として解釈するとだいたい「私は無量のいのちの仏に私をおまかせします」ということですから、そういうことになるのではないですか。この方は迷ってなどおられませんよ、迷っているのは私たちの方です。

人間に出来ることは人間がするのです。例えば長い間入院しておられましたから、その間ご家族の方やご親戚の方は看病してこられたのです。お知り合いの方はお見舞いもされたことでしょう。けれどももうこの方は命を終わられて、私たち人間に出来ることはもうないわけです。お念仏におまかせになって、お浄土へお還りになられたのです。

還るということは、例えば京都から来て東京へ行くことは還るとはいいません。京都から来たのであれば京都へ行く、行くというのもおかしな言葉遣いですが、京都へ還ることを還るというのです。ですからお浄土へ還るということはお浄土から来たということです。そのお浄土というのは、言うのが難しいですけど、お浄土というのが無量のいのちの仏さまの世界です。私たちの命は終わる命ですから無量ではないわけですが、ですから私の命・あなたの命・彼の命という区別もあるんですが、無量のいのちというのは例えばそういう区別もないんですね。ですから無量ということにもなるんでしょうが、私たちがそこから来た始まりのないいのちの世界、そしてもう終わりもしないいのちの世界へ還られたのです。そういうところから、相変わらず迷ってばかりいてお念仏もうしても「迷わずに成仏して下さい」とおかしなことを願ったりしている私たちに呼びかけていて下さるんです、あなたが迷わずに往生成仏して下さいとね。

たしかにまだお若くて、これから老人会なんかでも活躍していただかなくてはならない方だったのでしょう。たしかに残念で、悔やまれることです。けれどもね、残念だといって泣いてばかりいてはね、悔しいといって後悔ばかりしているのではね、いけないんです。私たちには、この方が私たちに願っていて下さることにお応えする義務がある。義務ですよ、南無阿弥陀仏とこの方(お内仏の阿弥陀さま)、この方(なくなられた方)に誓ったのですからね。忘れてはいけませんよ、私たちはね、相変わらずに迷ってばかりの私たちは今夜お誓いしたんです、宣言したのです、南無阿弥陀仏とね。

以上です。言葉や順序などはこの通りではなかったかも知れませんが、大筋ではだいたいこの通りだったと思います。このお話をなさったのは、1/29掲載の「山のお寺の掲示板」でご紹介しているお寺の方でした。それで、今回は「お寺の掲示板」はそのままにすることにします。


「この方」と最後に言われたのはたしかにお内仏と祭壇の写真を手で示されたのですが、そこまでの「この方」がどちらなのかは、あるいはわざと示されなかったのではないかと思ったりしています。「彌陀成仏のこのかたは」と言いますね、この場合の「このかたは」は阿弥陀さまですね。

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