随筆かも知れない

相続

2月10日

私も死ぬんです。死という縁をいただけば死ぬんです。皆さんも死という縁をいただかれたらみんな亡くなられるんです。この度はこの方がその縁をいただかれてお亡くなりになったのです。

なぜ死というご縁をいただくのでしょう。なぜというと難しいから分からないですけれど、一つ言えることは、すでに生・生まれるというご縁をいただいているから死というご縁をいただくということです。

私は今ここにこうしてすわっているんですが、思ってみれば生まれるというご縁をいただいて生まれさせていただいて、いちいち言えるはずもないほどの数知れないご縁をいただいて育った、育ったんではないですね、育てられたんです。

言ってみれば、いただいたご縁のかたまりがここにすわっているのであって、それを私が勝手に「私」と言っているだけのことです。まあ他に適当な言い方もないのだろうからよいとしても、自らを由として生まれたのでなく育ったのでもないということは知っておかなければなりません。

死にたくない、少しでも長生きしたい。そう思われたことはないですか。生まれることは喜んでも、死ぬことは忌み嫌っている、それが私たちではないですか。感情なんです、自分ではどうすることもできないから感情の世界に逃げているんです。

感情をもつことがいけないとはいいません、いけないといったところで人間であるいじょうどうしても持ってしまいますしね。けれど、感情だけではいけないと、これははっきり言えると思います。

先ほど私は生まれさせていただいた、育てられたと言いましたが、産んで下さり育てて下さるものを何と言うんですか。「親」と言うんです、そうではないですか。このかたまりの「親」はどなたか。このかたまりの、かたまりと言っていますが身体だけのことではありません、このかたまりの「親」はご縁の主である「大悲」である。

この大悲というのは阿弥陀さまの慈悲のお働きです。だから「親」といわず「親様」というのが本来の言い方です、知っているべきことを知っている方はそう仰有います。

私たちは「大悲」の子どもであるという自覚をはっきりと持たなければならない。そこに感情を越えた「道理」の世界が開けて来る。生まれることもご縁、死ぬこともご縁、同じくただいただくばかりのご縁である。「死ぬ」と言っても死ぬのでない、また一つご縁をいただくのです。

うんうんといまうなずいていて下さる方が幾人か居られます。こんなこと言うのはまことに申し訳ないんですが、今うなずいても家へ帰られたら「もう」というか「また」というかうなずけないんです。「けんどもやっぱり死にとうない」、それが私たちなんです。そういっている私がそうなんです。困ったことです。

けれど「親様」は子どもをよくご存じです。だからこその「五劫思惟」・「難行」だったんです。今一緒にお勤めしました「正信偈」に「煩悩障眼雖不見 大悲無倦常照我」とあるでしょう。全部お見通しなんです。だから私たちは「また」うなずけない自分に南無阿弥陀仏をいただくんです。

長くなるのでもう終わりますが、子供は親の何かを、鼻の形であったり強情な性質であったりするんですが、何かを相続して生まれて来るものです。「大悲」の子である我々は阿弥陀さまから何を相続しているんでしょう。


何日か前にあった「お通夜」でのお話の内容を思い出しながら書いたものです。お話の内容はこれだけではなかったのですが、大筋でだいたいこの通りであったと思います。

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