随筆かも知れない

遺伝

8月1日

「お念仏は遺伝する」と仰有った方が居られます。それをお聞きしたのは、もう十年ほども昔のことです。

デオキシリボ核酸のなかにお念仏があるという意味ではなかろうから、親の背を見て子供は育つというような意味だろうと、その時は思っていたのです。

「遺伝」という言葉を国語辞典に載っているような意味でだけ捉えていたのですから、そんなふうに思うのも無理なかったのかも知れません。

縁起しないものがなく、私たちすべては因縁生であるわけです。如来廻向の大行たるお念仏が遺伝しないはずはないのです。

私の我執・我所執がいかに頑なであろうとも、私に遺伝した「お念仏」が私の行となり、行は信に相続し、信はまた行に相続します。「お念仏」は「我」に働くとき極めて動的です。

「私」という氷はもともとは智慧の海の水であったものです。我執・我所執にとらわれるところに、その水が氷になっているのだけれど、智慧の海が「お念仏」であればこそ、さまざまに「氷」となっていた「我」が溶けてまた水となるのです。

これが「お念仏の遺伝」だと思うのです。「私」にあって「相続」ということを現実に難しくしている「我がはからい」、これは嘆かわしいかぎりですが、やはりお念仏させていただくほかにはないのでしょう。


いま私は「お念仏は遺伝する」という言葉をそのようにいただくのですが、あるいはまた別のことを思う時があるのかも知れません。仏法の「お言葉」は分かってしまうということがないのですから、何度も何度も繰り返しいただかなければならないと思います。

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