随筆かも知れない

「家族の真宗」

10月24日

ご開山聖人に「縁」を断たれたご長男「善鸞さん」はどのようなお方であったのでしょう。この方にはこの方の深い苦悩があったのではないでしょうか。自分の迷いだけでなく他の人々の迷いも引き受けなければならないが故の苦悩があったのではないのでしょうか、まったく想像の域を出ないのですが。

人がお念仏に出逢わせていただく。まことに稀なこと、めでたいことであります。機である人は、お念仏にお出逢いし、称名念仏のところに清浄なる願に生かされる。法であるお念仏からいえば、人に宿ってそこにまた体を持つということになるでしょうか。勿論人が体になるのでなくその称名念仏(音声、無声を含む)がということです。

他力のご信心のあやうさはここのところ、つまりお念仏にお出逢いした人が決して「(法)体」となっていくのではないということにもあるように思います。いわゆる煩悩は言うに及ばず「計らう心」もなくなりはしないのです。妙好人として知られた方が晩年に「小乗やった」と嘆かれたというお話をお聞きしましたが、その嘆きも「我がはからい」ではないのでしょうか。

これも結局は計らいなのですが、お念仏にお出逢いした人の称名の聞こえる家とお念仏のない家とでは何か違いがあるのでしょうか。何も違いがないのでしょうか。「一切の有情はみなもって世々生々の父母兄弟」との仰せですが、いま縁あって家族として一つの家で暮らす父母兄弟の一人から出て下さるお念仏は、「孝養のため」でないのは勿論のこと、無分別の智慧として理屈抜きに他の父母兄弟にしみ込みはしないでしょうか。「土徳」ということはよく言われますが、「家徳」とでもいうべきものはないのでしょうか。

お念仏が個にとどまるのであれば往相があって還相がないということになり、それはご本願ではない。畢竟して自力のお念仏である。他力ご廻向のお念仏の真なる宗は、機が法におさめ摂られて現生に不退であり、機法一体のところに二種にして不離の往還廻向があるということである。そうすれば父母兄弟の一人が称名念仏させていただくところに必ず還相のご廻向があるものであり、父母兄弟にお念仏は伝わるものである。こういうことは私が理屈で考えることで、計らいなのですが、そういうことになります。

ついでに理屈でものを言うと、立派な建物があっても家庭がなく、血縁がありながら家族がいない家が多くなった理由の一つは、同じ家で暮らすなかの誰一人として「しみ込む教え」を真に宗としていただかないからなのではないのでしょうか。修行を要とする教えは修行をしない人に「しみ込む」ということはありません。

残念なことに現実には理念であり、「一切の有情はみなもって世々生々の父母兄弟」ということはなかなか自覚とはならないのですが、お念仏の教えは全生命にしみ込んで広まる教えです。逆に私が凡夫であるがために「残念なこと、自覚にならない」だけで、すでに全生命がお念仏のところに生かされてあり、すべてがお念仏申しているのが真実であるのかとも思いますが、それが凡夫である私にも分かるように証明されるとすれば、まず家族においてであるのではないでしょうか。


「歎異抄」、「御消息」などをみますと、ご開山聖人ご在世の当時から「お念仏」の教えに出逢われた方のなかにもその教えに対する疑義、または誤解はずいぶんとあったようです。時代を下って蓮如上人の頃になるとなおさらであったのでしょう。「お文」というものは、いわば蓮如上人による「歎異抄」であったと言える一面もあるかと思います。私たちが「個人」として持たなければならないのは「歎異」の心であり、お念仏ではあり得ないのです。

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