随筆かも知れない

出来た人

平成13年6月25日

「勉強ができる」とか「仕事ができる」という「出来る」という言葉の使い方があって、「優れている」とか「有能である」というような意味に使われるようです。病気とかひどい怪我で長期入院でもしていたら、勉強も仕事もすること自体ができないわけですから、「優れている」とか「有能である」という意味のまえに「勉強や仕事をしていられる環境にある」という意味があるのではないでしょうか。優れていて有能な人に限ってそういう意味に気づくのが難しいように思いますが、いかがでしょう?

「わたしゃアホやし、仕事もできんもんね〜」と他人事にする方も居られるかもしれませんが、親兄弟にでも「おまえはアホで仕事もできん」と言われて腹が立つのなら、立派に「優れて」いて「有能である」に違いありません。そうでしょ?

「生きる」とか「生きている」という言葉には「できる」は含まれていませんが、勉強や仕事ができるということと同じようなことが言えるのではないでしょうか。「生きることができる環境にある」という意味がもともとあって、それは言い方を変えると「生かされている」ということになるのではないでしょうか。

それほど簡単でもないのでしょうが、「生かされている」という自覚が生まれるときにおぼろげながらも見えてくるのが「本願他力」の世界です。親鸞聖人は「自身は現にこれ罪悪生死の凡夫、曠劫より已来、常に没し常に流転して、出離の縁あることなし」と確認なさいましたが、自身についての自覚をそれほどまで深めてくれるのは「本願他力」のほかにはないでしょう。生きる、生きているということは生かされているということだと気づかせて下さるのも、実は阿弥陀さまの「本願他力」のお働きであるのです。

生きる、生きているとしか思わない無自覚の自力の世界と、生かされているという自覚の他力の世界とが、二つ別にあるのではないわけですから、生きていると思うばかりの者が生かされていると気がつく時、すなわちそこにあるのは他力の世界であるのです。「時、すなわち」が「(自然)即時」です。無自覚であるために「私が生きている(我執)」という自力の「殻」を作っているけれど、実にあるのは南無阿弥陀仏の本願念仏の世界であり、わたしが生かされていたのは、実にはそのお念仏の世界であるのです。

「出来た人」というのは、一般的には苦労を重ねて人格が円満になった人を言うのでしょうが、特に言えば、法蔵菩薩さまのことではないでしょうか。


今回は「寺報」に書いた文章をそのままここに掲載しました。
(ここからは、寺報には書かなかったことです。)
法の深信から機の深信が開かれ、機の深信によって法におさめとられる。これは摂取と治定を「おさめとる」と言っているわけで、南無阿弥陀仏に帰する、一体になる、一如となるということです。法の深信・機の深信と言っても二つバラバラなのではありません。南無と阿弥陀仏が別でなく、南無阿弥陀仏であって念仏である。
こんなことを言うと、「放言」の続きになるのでしょうか?

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