随筆かも知れない

自燈明

平成14年2月22日

「我々の未来は過去にある」というようなことを、どのような文脈だったかは忘れたけれど書いた覚えがある。死んだらどうなるのだろうと問う人がたくさんあって生まれる以前はどうだったのだろうと問う人があまりないことを思っていて思いだした。

回向とは回思向道、我々が仏に願をかけて何事かを祈るのでない。回因向果というような我々の計らう心の方向を回し、仏が発し給う願によって、我々は仏に念じられて道に向かわしめられる。

回心はただ一度あるべし。一念帰命というのは我々の計らいのまじることでなく、阿弥陀仏が南無される一念に帰入するとき、凡夫の計らいの一切がすでに無効である。回心が自力であるなら心の方向が360度回って元のまま、回りに回って竜巻にのまれて空高く上がってついに真っ逆様に地に落ちるようなことにもなるのだろう。それこそを無明の輪廻というのではないか。

譬えて言うようなことにすぎないけれども、我々がやはり己の計らいをまじえてぐるぐると回りに回っていても、回る我々一人一人の眼前には南無阿弥陀仏だけがあるというような構図の全体が他力であると言ってもよいのではないか。我々は己の計らいをまじえてぐるぐると回る、回るけれどもその回転が回転でなくなる、そういうはたらきを他力と表現してもよいのではないだろうか。

無明という輪廻・無明による輪廻をのがれることの出来ない凡夫の目の前を一時も離れず、真っ正面に南無阿弥陀仏がましまして、凡夫の無明の輪廻は輪廻でありながらにそれが迷いではなくなるところに願力の不思議があって、我々凡夫の捨てるに捨てられない計らい、自力根性というものがそのままであっても一切が無効であって善でも悪でもなく、善にもならず悪にもならないのはお念仏という仏智の不思議によればこそであろう。

信が我々のものであって我々が仏を信じるということであるなら、その信は変わりもするし終わりもする。そうではない。信は阿弥陀さまにあり、その信のなかに我々が生というご縁もいただいた。他力のなかにあって自力で計らうばかりのものであることをかねてしろしめせばこそ、仏願あり、仏智不思議の南無阿弥陀仏あり。

死んだらどうなるのかと問うのは凡夫道、どのようにして生まれきたのかを問うのが仏道と、そんな簡単なことでもないのだろう。けれど、死んだらどうなるかと問うことが未来をいうのでなく、どのようにして生まれたかと問うことが過去をいうのでなく共に現在をいうのであり、只今のこの現在にご縁を知るということが仏道であることは確かなことであろう。

生というご縁をいただいたから老・病・死があるのでなく、生も老も病も死も同時にいただいたものである。今この現在にご縁を知らせていただけば、過去に生があり現在に老・病があり、未来に死があるのでない。生も老も病も死も現在にいただく(いただいた)ものであるところに宿業が宿縁である道理が明らかであり、この道理によって我々は自分に出逢うということが南無阿弥陀仏にであうことであるのを知らしめられる。


南無阿弥陀仏という円環状の道があり、我々の計らう心は自分が動いてそこを歩いているように思う。だから自分は何処へでも歩いていける、南無阿弥陀仏の道から離れようと思えば離れることも出来ると思う。けれども、実には我々は動かず道が動くのである。

また別に、突飛なことを敢えていえば、阿弥陀仏という太陽があり、南無阿弥陀仏という公転があり、自力という自転があって、それらが総体として自然法爾である。

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